2018.09.23 03:18坂井豊貴「マーケットデザイン」⑧⑨⑩マッチング理論日本経済新聞社および坂井豊貴氏の許可を得て、2013年に日本経済新聞「やさしい経済学」欄に掲載された同氏によるマーケットデザインの記事を転載しています。第8回 マッチング理論(2013/5/16)マッチング理論は、社員の部署への配属や、学生の進学先の割り振りなど、「人」と「部門」の組み合わせを考察する強力なツールです。ここでは単純な例として、就職活動をしている三名の学生(1、2、3)と、彼らのうち一名のみを採用したい二つの会社(A、B)がいる状況を考えます。各学生はどの会社に行きたいか希望する順序を持っており、各会社はどの学生を欲しいか希望する順序を持っています。その順序は図にある通りですが、これは例えば学生1は会社A、Bの順で入社を希望することを意味...
2018.09.23 02:57坂井豊貴「マーケットデザイン」⑤⑥⑦オークション後半日本経済新聞社および坂井豊貴氏の許可を得て、2013年に日本経済新聞「やさしい経済学」欄に掲載された、同氏によるマーケットデザインの記事を転載しています。第5回 諸方式の比較(2013/5/13)第二価格オークションは一番高い入札をした人が、二番目に高い入札額を支払う方式です。仮に参加者が2人いたとして、一方が10万円、もう片方が5万円の入札をしたら、勝者となる前者の支払い額は5万円です。この方式のもとで各参加者は、最大限この額まで払ってよいという金額である評価値を、そのまま正直に入札するのが、他の参加者たちの入札額に関わらず最適です。その性質を耐戦略性というのでした。さて、競り上げ式オークションは、最初は低い金額から競りが始まり、参加者たちが徐々に金...
2018.09.23 02:55坂井豊貴「マーケットデザイン」③④オークション前半日本経済新聞社および坂井豊貴氏の許可を得て、2013年に日本経済新聞「やさしい経済学」欄に掲載された同氏によるマーケットデザインの記事を転載しています。第3回 不確実性下の決定(2013/5/9)第一価格オークションについて考えてみましょう。各参加者は入札額を決めてそれを主催者に提出し、一番高い入札をした人が勝者となりその金額を支払う方式です。この方式は単純ですが、そのもとでの参加者の意思決定問題は複雑です。まず参加者としては、できるだけ安い値段で財を競り落としたい。しかし別の参加者も多数いるので、彼らより安い入札をしたら勝つことはできない。そして、払ってもよいと考える上限を超す入札はしたくない。つまり一人ひとりの参加者は、自らの上限を超えない範囲で、...
2018.09.23 01:41坂井豊貴「マーケットデザイン」①②経済学のものづくり2013年5月に日本経済新聞の「やさしい経済学」コーナー(通称「やさ経」)で、坂井豊貴氏がマーケットデザインに関する全10回の連載を寄稿しました。ここでは日本経済新聞社および同氏の許可を得て、その元の原稿を5回に分けて掲載します。新聞に掲載されたものとは一部の表現が異なっていることがあります。マーケットデザインは、オークション理論を含む、大注目の学問領域です。2012年にはこの分野への貢献を称えられ、アルヴィン・ロス氏とロイド・シャプレー氏にノーベル経済学賞が与えられました。経済学の先端知は、ビジネスや政策と直結しています。第1回 経済学的な「ものづくり」(2013/5/7)日本人は「ものづくり」という言葉を好みます。この言葉から多くの人が想像するのは...