第3回ワークショップ「暗号通貨とビザンチン将軍問題」

オークションラボでは、ビジネスパーソン向けに定例ワークショップを開催しています。これまで2回開催して、盛況が続いております。第3回目を1月24日(木)の19時から開催します。スピーカーは坂井豊貴・慶大教授です。会場は、有楽町・日比谷駅からすぐの「Place 171」。(株)Dolphins と(株)デューデリ&ディールのサロンスペースです。なお本ワークショップは純粋に交流を目的としており、何かの販売(やそれに類すること)は行われません。

近年、オークションまわりの研究と、実務のコラボレーションは、世界的に盛んになってきています。しかし日本でその動きはほとんどありません。当ラボがその推進に貢献できれば幸いです。が、今回はあまりオークションではないです。初めての方、前提知識がない方も、大歓迎です! どうそ気軽にお越しください。


Auction Lab第3回ワークショップ ご案内

「暗号通貨とビザンチン将軍問題」 坂井豊貴

銀行のATMから、預金を全部(10万円)引き落とすとします。このとき情報の管理は「センター」のコンピュータでなされます。作業のフローは次のとおり。

1 僕がATMで「10万円引き落とし」と操作する。

2 その要請がネットワークを通じて、銀行の情報センターに届く。そのセンターは、すべての情報を一元管理しており、僕の口座に10万円があることを確認。その口座から10万円を引いて、ATMに「物理的に10万円を出せ」と指示する。

3 ATMは物理的に10万円を出す。僕はそれを手にして財布に入れる。


ここで肝心なのは、センターがただ一つだけ(台帳が一つしかない)ということです。その台帳に書かれていることが真実のすべてです。


ビットコインをはじめとする多くの暗号通貨は台帳の管理が、そうなっていません。大まかにいうと、すべてのATMがセンターのようになっています。これは分散管理といって、ATMどうしは無秩序なネットワークでつながっています(network topologyがない)。よって、下手をすると次のような事態が生じます。

1 僕がATMで「10万円引き落とし」と操作する。僕は10万円を手にする。

2 その引き落とし情報がネットワークを駆け巡る前に、僕は別のATMで「10万円引き落とし」と操作する。そのATMにはまだ引き落としの情報が届いてないので、僕の口座にはお金が残っており、10万円を手にできる。

3 やがて最初の引き落とし情報と、二回目の引き落とし情報が、ネットワークを通じてすべてのATMに伝わる。しかし時すでに遅し。僕はひとつしかもっていない「10万円」を、二回使うことができた。


これは電子的な「偽金造り」で、ダブル・スペンディングといいます。それでは、どうやって多数のATMのあいだで、同じ台帳を共有するか。難しいのは、嘘の情報を流す、悪意のあるATMがあったり、壊れているATMがあったりすることです。この問題を「ビザンチン将軍問題」といいます。1982年に計算機科学者のランポールらが、論文

L. Lamport, R. Shostak, M. Pease “The Byzantine Generals Problem” ACM Transactions on Programming Languages and Systems, Vol. 4, No. 3, July 1982, pp. 382-401

で最初に考察しました。しかしこの研究にも前史があって、実はフランス革命前の時代にコンドルセが大著「多数決論」で関係ある研究をしています。


今回のワークショップでは、ランポールらの論文の骨子を、まったくの初学者向けに解説します。たんに座学ではなく、実際の人間を使って、その場でリアルにお見せしたいと思います(協力者が現れた場合に限りますが)。前提知識は要りませんので、楽しんでいただけると嬉しいです。ちなみにリップルのProof of Consensusは、わりとランポールの研究で提案された解決法と近いです。ビットコインはあまりランポールっぽくない。


このワークショップで多様な方々と交流したく思っています。参加は事前登録制です。メールでauction-lab@dd-d.jp(担当:藤)まで、①お名前 ②ご所属 ③ご職業④連絡先 を記載のうえ、ご連絡ください。

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